MONOLINE TONG開発者たちの物語
一本の線を極めた道具
食材を優しく扱うトング
開発背景
一本のステンレス棒で成立させるという発想
″一本のステンレス棒を曲げることで、どこまで道具として成立させられるのか。″
モノラインの開発は、この発想を起点にスタートしました。
掴む、持ち上げる、返すといった一連の動作を、どこでしならせ、どこで受け、どう逃がすのか。

すべての機能を一本の曲線の中に内包するスケッチから開発は始まりました。
道具の原点に立ち返る設計思想
この発想の背景にあるのは、道具の原点に立ち返るという考え方です。
かつて人は、そこにあるものにほんの少し手を加えることで機能を生み出していました。
原始時代の人々が手にした木の枝。
先端を少し整えれば「刺す」ことができ、二股の枝であれば「つかむ」ことができる。
形を見立てるだけで機能は生まれる。
その考え方を、現代のプロダクトとして成立させたのがモノラインの設計思想です。
なにかを足したり引いたりするのではなく、もともとの素材をそのまま活かしつつ機能を生み出す。
そう考えていく中で、一本のステンレス棒という構造に行き着きます。
“線”にすべてを委ねる
この製品の核にあるのは、線そのものに機能を持たせるデザインです。
掴む、持ち上げる、返す。
その一連の動作を、“線の連続”だけで成立させる、とてもシンプルな考え方。
しかしながら、設計としてはシビアな条件でした。
ごまかしの効かない領域で、機能と美しさの両立が求められます。
様々な試行錯誤が繰り返され、スタートから数か月後、最初のデザインが完成しました。
直感を研ぎ澄ます試作
そこから試作と検証が始まりました。
ファーストサンプルでは、「掴む」「離す」といった基本動作を繰り返し、
手に伝わる違和感を丁寧に洗い出していきます。
当初は、指を添えるための凹凸を設けていましたが、実際の使用では、持ち替えや自由な操作を妨げる要因となりました。

セカンドサンプルではその凹凸を排除し、なだらかなラインへと修正しています。
成立を左右した加工精度
最大の課題は、加工精度でした。
丸いステンレス棒を曲げながら、先端の位置を合わせ込んでいく。さらに、バネとなるU字部分は、プレス加工によってわずかに形状が変化します。
そのわずかな差が、
・掴み心地
・戻りの強さ
・ねじれの発生
に直結します。
当初は見た目を整えるため、プレス部分を削る検討も行われました。
しかし細くすることで、力の加減によってねじれが強く生じてしまう懸念があり、採用には至りませんでした。
微調整を重ねた末にたどり着いたのは、「力の流れ」に忠実な形状でした。
操作感を支える、刻印という要素

モノラインにおいて、レーザー刻印の精度は重要な要素の一つです。
見た目の美しさだけではなく、滑り止めとして機能させるためには、わずかな深さの調整が欠かせません。
しかし実際の加工では、デザイン通りに再現されないこともあり、深さが足りず滑りやすくなるといった課題が生じました。
こうした細部の精度が直感的な使用感につながるため、製造現場との調整、試作を何度も重ねていきました。
開発期間は約10ヶ月。
一つひとつの試作は、成立するかどうかの検証でした。
辿り着いた形

試行錯誤の末に導き出された、ミニマムでありながら機能性を備えた「モノライン」。
先端を細く仕上げた「ファイン」は、箸のように繊細な操作を可能にします。

一方で、面で受け止める「ワイド」は、厚みのある食材を安定して保持します。

どちらも共通しているのは、余計な機構を持たない一本構造であること。
持つ位置によって、直感的に扱える形状。
そして、置いたときに先端が触れない設計や、滑りを防ぐための加工など、実用性を支えるディテールが組み込まれています。
「究極にシンプルであり、使いやすい。」その両立の中で、この形にたどり着きました。


開発者メッセージ
モノラインは、「一本の線からどこまで機能を生み出せるか。」という発想から生まれました。
シンプルな構造の中で、掴む・持ち上げる・返すといった基本動作が、無理なく行える形状に仕上げました。
焚き火で串のように刺した食材を火にくべたり、塊肉に豪快に火入れしたり、繊細な盛り付けで自己満足に浸ったり、どのシーンでも使い方を限定せず、自由に扱えることを重視しています。
余計な機構を加えず、形状そのものに機能を持たせる。
その積み重ねの先に、「モノライン」というかたちがあります。
日常の調理やキャンプの中で、自然に手に取っていただける道具になっていれば嬉しく思います。
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